からっぽ

 

私には、何にもない。

オリンピックを目指すほど、のめりこんだスポーツもないし、猛勉強をするような夢もないし、将来のことは考えていないし、そのために今を燃やし尽くそうなんて思うこともない。

世間が認めるような結果を出したこともないし、自分を焼き尽くすような努力もしたことがない。

自分という存在が、アイデンティティが、未来まで連続して存在してゆく感じがしない。

それは普通のことなんだろうけれど、でも、普通のこと、という言葉に何の価値もない。

スポーツや将棋や勉強や芸術、そういうものに明け暮れて、その道を極めるんだと決めた人がまぶしくて、私も必要な努力ならいくらだってしようと思っていた。

でも、なんの努力をしたらいいのかも不明だった。

私にはそれなりに好きなことはたくさんあったけれど、極めたい、極めよう、と当たり前に思うものなんて、何一つない。

書かなくても、名作なんてたくさんある。

歌わなくても、名曲なんてたくさんある。

インターネットにつながれば、いくらでも面白い人がいて、それを追いかけていれば人生は充実し、終わっていく。

世界が豊かであるということはとてつもなく素晴らしいことに違いないはずで、そこにある私の生活や私の人生はたしかに満たされてしまっている。

でも私自身は満たされていない。

すごく変な感じがする。

そして、そんな自分のひからびた気持ちをちゃんと愛していこうと決めている。

 

誕生日

 

数年前、私の中に淡い虹がかかって

年月が経つほどに

その虹はあざやかさを増して

私は今まで一度もそれを見失った事はない

ねうちのないことはあきらかだけど

所詮じっとしているほどのことさえも

捨てることさえもできない

捨てたところで

捨てたそのものに未練がのこるわたしだし

 

ただ、死のようなひとつのねがいがあって

そのねがいの芽が

私をこのみちへ吸いよせていく

 

そのうち空っぽになるかもしれない

生きるたびに身軽になってゆく

重さを忘れてゆく

覚えているよ

と告げることが

すべてだったのに

忘れてしまったものでさえ

私を作ってゆく

その喪失の中に

私がいる