クリスマス

クリスマス、という言葉に人がみるもの。それはたぶん実際よりずっと特別。綺麗なイルミネーションとか、一緒にいたい、と言われたときの、あの湧きあがる喜びは、そうでないと説明がつかない。だって、どんな日になるかもわからないのに嬉しいなんて変だと…

人生

今こうしてることが、全部思い出の中のことのように思える。どこかでぜんぶが終わった場所から振り返っているように、今のことを感じる。そうかと思えば急に何がどうなってるのか全部わからなくなる。 思い出を覚えておくのが得意なために、ずっとつらい。 …

別れ

お別れする時 さようなら ってみんな言う わたしは あの時 さようならを聞くことが出来なかった さようならという言葉を聞かなくてよかった わたしはまだ誰とも さようならをしていない

秋がくるという。 すこしづつ、そして、僅かに色づいてゆく私の心が、それよりももっと広いものの中へ崩れてゆく。葉は赤くなり、美しさに耐えず落ちてゆく。 秋はほんとうは生涯にただ一度だけなのではないか。秋が巡って来る度に今度こそはと夢見るけれど…

饗宴(プラトン)

ほんとうに自分の魂の片割れのような存在と出会ってしまったら、きっと優しく暖かく甘いことにはならない。 抱擁は硬く、互いの肺はつぶれ、骨や筋肉を直に感じる。 痛みの強さが愛の深さのような気がする。 ひとつの傷にそっと触れると、同じ傷をもつ人から…

最近

私はいつもへらへら笑ってるし、いじわるなことも言えるし、割とどんな時も楽しそうにできるけど、テレビもパソコンもない家でコーンフレークをもそもそ食べてる時の方がずっといい。大きな声を出さず、静かに優しく暮らして、たまに微笑むくらいでいたい。 …

9月

昔、私の家で鯉と鳥が死んだ。鳥は兄が飼っていて、私は上の家のおばさんがヒマワリの種をくれたことしか覚えていない。鯉は私が小学2年生の時、墓参りの帰りに拾ってきてその数日後に死んだ。名前もなかった。私はすべてが恐ろしくて仕方がなく、恐ろしさを…

憧れ

私は蝶をピンで壁に留めました もう動けない 幸福もこのように この標本のように、生きれば 欲しいものや憧れているものを 本当の本当に諦められるまで なるべく思い出さないように 何度でも針を刺す わからない きこえない 言葉に代って 今はこれがわたしの…

太陽たっぷりの中で思いつく行動は、たいてい素直なんだと思う。こんな夏のような、人生にあんな一瞬があったということを、ふと思い出す。私の人生にはこんな一瞬があった。ゆるさないことが私の純粋だった。もっと優しくなって、ゆるそうとしたのは私の偽…

手放す

いたわりである筈のものが、時には悪意よりもはるかに深く傷をえぐる。本当にやさしいのは誰か。救われたのは誰か。手放すものも、手放されるものも、手にするものも、されるものも、じぶんの淋しさのために悔しく、ひとの淋しさのために苦しい。私のくるし…

日曜日

「こころがくだける」というのは例え話だと思っていた 恨んでなんかいない うしろ姿を見送り泣いた覚えなんかない でもたぶん、あの時心はくだけていた たぶん、あれからずっと助けてって思ってた それでも助けを求めたのは一回だけだった あんなにももろい…

お墓参り

みんなのことがあまり好きではない ということがばれないように、丁寧に、親切に接している。 会ったことがなくても、知り合いではなくても、名乗らなくても、墓場には花を添えることが出来るらしい。 もっと簡単に、名乗らずに、花を一輪供えるぐらいの感覚…

たった数日間の想像妊娠を、医師はいつも誤診する。おめでとう。いつ頃ですか。それから、精神の悪阻が襲う。女は、そんなに、幸せになりたいのか。都合よく使った「さみしさ」の分だけ、虚しさの卵を宿した。みつからなかった顔を探す。ひどく光る太陽を見…

今思うこと

死にたいと書くことで死なないですむのなら、詩は薬よりも役に立つ。 本で探そうとしたのはまちがいだった。救われようとして、どこかの誰かが作った呪文を探したのはまちがいだった。私は私だけの呪文を作らなくてはいけない。 最近は特に。自分がつまらな…

ひとり

かつて踏みきったまま 未だ空中をさまよっている足が 虚ろに、けれど現に 角をまがった なにかとてもだいじなことを 思い出しかけていたのに 視界の左すみで 山茶花の花びらが 耐えきれないように 無惨な散り方をしたので こんな時 ここにいない人の肌を感じ…

教会

花はいつ死んだのだろう すでに切りとられ トゲまでむしられていたのに今更枯れた 血が出たら 血が出たら、救われたのに もう 腹立たしさや さびしさによって泣かない ないものねだりによって泣かない ひそやかに 控えめに 詫びながら それでも尚差し伸べら…

代価

答えのない問いの中に沈潜することがある。答えはわからない。ただ「どうして」という問いだけが残る。それでも私は信じている。これで、神様までいないなんて、それこそ許されない。神様はいる。きっといる。 画家のシャガールは、生涯を聖書とサーカスに大…

列車

悲しみを忘れるための旅だから 走っている時の方がまだよかった 停車する この静けさが堪らない 最初からなければ良かったものを 最初からありはしなかったものを 見つけて そして失うことのむなしさを もういちど思い知っただけだった 私の中は空っぽであり…

食べる

見ているだけでは物足りなくて 何とかしてもっと深くつながりたい 交わりたい という気がするとき 不器用なことに その方法として 食べる ということしか思いつかない おいしいわけではない どころか、むしろまずい 私はそれを 精神的においしい という きれ…

博愛

特別な一人の人間として選ばれたいわけではない。 浅瀬の海のような無責任で純粋に適当に好意を抱かれていたら良い。 子供のころは皆そうだったはず。 でも大人になると皆変わる。 「好き」という感情を、社会や関係性に発展させようとする発想が理解出来な…

細い首 青いマフラーが あの日誰かを空につりあげた 人が死んだのに 空があんなに美しくてよかったのだろうか 燃えていた 雲までが 炎あげて あんな大きな夕焼け みたことがなかった

赦し

わたしが ゆるされすぎてくるしい というと もっとゆるすから という もっとくるしむといい という

クリムト

希望する 係累を軽んじる むしろ一切を棄てる 平凡万能が不可ない 規定欲、千里同風が不可ない あの金の絵の具 ひと刷毛の夢 ついにほんものの 終りの瞬間 その中に全てがある 芸術上の諸形式を超えた 生命の叫びを歌う能力がある 殆んど全く容喙出来ない世界…

ウソ

わたしがうそをつく時 まだ知らないほんとうのことを 知ってるような気になれた だって ほんとうのほんとうは 一瞬で過ぎ去ってしまう こんなに甘いのに 砂糖が入っていない しんどいな もうずっとしんどい 忘れがたい花 忘れがたない、花 果物は実りながら…

関わり

みんなどこかに行ってしまう わたしはいつもここにいるのに 何かを共有しない限り 一緒にいることができないと 罪を分けても その罰さえも すでに重さも異なると そんなにわたしたちはひとりぼっちなのか こころなんて内臓でしかない 死んだ人間を すぐに燃…

実存

世界があるから あなたに会えなくても あなたがいないということにはならない 暖かさなどみじんも感じない 遠い火を見つめて満足できる つきつめれば全部 あなた自身の存在に比べれば ほんとうにどうだっていいことで だから何

からっぽ

私には、何にもない。 オリンピックを目指すほど、のめりこんだスポーツもないし、猛勉強をするような夢もないし、将来のことは考えていないし、そのために今を燃やし尽くそうなんて思うこともない。 世間が認めるような結果を出したこともないし、自分を焼…

誕生日

生きるたびに身軽になってゆく 重さを忘れてゆく 覚えているよ と告げることが すべてだったのに 忘れてしまったものでさえ 私を作ってゆく その喪失の中に 私がいる

欲しいもの

わたしが 欲しかったものを 手に入れた全ての人が すこしも美しくない そのことが なによりも わたしを傷つける

好きなひとが死んだあとの 大地はすこし甘い匂いがした そこにあったはずの 虫の死骸はいつの間にか無くなっていて 生き返ったのかな、と平然と思った 誰かを大切に思う気持ちに どれぐらいの意味があるんだろう わからない わかってもなんにもならない