たった数日間の想像妊娠を、医師はいつも誤診する。おめでとう。いつ頃ですか。それから、精神の悪阻が襲う。女は、そんなに、幸せになりたいのか。都合よく使った「さみしさ」の分だけ、虚しさの卵を宿した。みつからなかった顔を探す。ひどく光る太陽を見た。煙突の立ちならぶ風景を見た。失ったものは何だっただろう。失った代わりに何があっただろう。何をしてきた手かなどと問うこともなく、私の手から餌を食う兎。だいじなものぜんぶ。ひきずっているものぜんぶ。ちっとも開けない引き出しの中身。求めるべき対象は、超自然的なものではなく、この世のものでなくてはならない。超自然的なものは光である。それを一介の対象にするのは、それを低めることになる。少しずつわたしからこころが溢れてゆく。たぶん、私が小さくなったために。そうやって自分をちっぽけにすることが、それでも、救いとして訪れる。私がひとつひとつ満たされていくなか、来年までもちこす空白はちゃんとあるのだろうか。小さい頃は、雪を握っても溶けないものだと思いこんでいた。今は、この手のひらにある温かさより正しいものがたくさんあるらしい。一人ではない。そのことがときどきかなしく重い。